広末涼子W不倫報道で考える “芸能人叩き” を正当化するマスコミの虐め体質【松野大介】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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広末涼子W不倫報道で考える “芸能人叩き” を正当化するマスコミの虐め体質【松野大介】

 

(3)芸能人が広末涼子に触れないワケ

 

  脚本家の倉本聰氏がコメントした記事が出た。
「広末涼子のW不倫に思い「広末さんを責めたいとは全然思わない。上等じゃない」」(スポーツ報知)

「愛っていうのは不倫とか以前に、永遠のものじゃないですか」と静かに語り、「だから広末さんを責めたいなんて全然思わない。上等じゃない。自分だってがんばりたいですよ。(19年に65歳年下の恋人と交際報道があった)クリントイーストウッドを超えたい」

 おぎやはぎの小木博明さんはラジオでコメントした。

「おぎやはぎ小木 広末涼子のラブレター流出は「イジメだよ。団体で、集団で」」(東スポWEB)

 つまり、ラブレターの流出までやるのは集団イジメだと。

 コメントを出した芸能人、著名人は数少ない。

 その理由は大きく2つあると思う。

「マスコミ批判してマスコミに嫌われたくない」こと、「広末涼子を擁護してもマスコミを批判しても話題が大きくなり、広末さんのためにならないので、さける」ことも理由だろう。あとひとつあれば、ウッカリ口を挟んで、マスコミやネットから「あいつも不倫してるんじゃないか」と身辺を過去までほじくられるのが怖いから。ほじくられなくても、「あいつは不倫容認派だ!」とマスコミやネットで書き立てられれば、それこそレギュラー番組やCMを失ったりし、事務所など他人の損害にまで及ぶ。

 優先すべきは保身と仕事なので、ワイドショーに出ている芸能人、著名人は局の意向にしたがい「まあ、いけないことですね」と口重くコメントすることになる。

 

(4)コンプライアンスの名の元にネットを味方につけた芸能マスコミ

 

 ある芸人が私にメールでこう書いてきた。

《ネットの書き込みなんかほんの一部なのに、全体の意見みたいにとられるのが本当に怖いです》

 広末さんに限らず芸能人のスキャンダルがネットニュースになると、コメントは多くて1000人くらい。同じニュースがいろんなサイトから出るから、合計しても1万くらいだろうか。批判するコメントを書かなくても、読んで批判に賛同する人が10倍から100倍いるとして10万人から100万人。その10倍でも1000万人。つまり1億人くらいの日本人はほぼ興味がない(または観てない)んじゃないか。

 100万枚売れたレコードの流行歌を数千万人が口ずさめた昭和と違って、今はネットの芸能記事を観てる人以外は興味がないか、そもそも知らない人が多い。ましてや書き込みを読むほど暇じゃない。しかしテレビは、「ネットの反応は?」と、日本中の多数の反応のように取り上げる。そうしないと、テレビを観る人だけでなく、ネットを観る人もつなぎ止められないから。

 視聴層の高齢者にはネットの書き込みが世間の大半ように思わせて「ネットの声はこうですよ!」と紹介し、ネットで書き込んでくれる人には「あなたたちの書き込みが世論を動かしてますよ」と思わせる。両方のお客さんをうまく操るわけだ。

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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